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PRO'S NOTE #01
ロゴリニューアルで、何を残して何を変える?
長く使われてきたロゴを、どこまで変えるべきか。実務で考える判断の仕方を、Starbucks、JAL、出光興産の事例とともに紹介します。
ロゴリニューアルは、全部を新しくすることではありません。長く使われたロゴには、お客様や社員が見慣れた形があります。会社が積み重ねてきた想いも、そこに重なっています。
依頼を受けたら、まず「何を変えるか」と同じくらい「何を残すか」を考えます。新しい形がきれいに見えても、その会社だと分からなくなってしまっては困るからです。
01 / KEEP
モチーフは、できるだけ残す
リニューアルなら、すでに認知されているモチーフは残した方がいいと思います。たとえばStarbucksも、ロゴの見せ方は変えながらサイレンのモチーフを使い続けています。見慣れた象徴は、会社を思い出す手がかりになります。
もちろん、形を一切触らないという意味ではありません。細部を整理したり、小さな画面でも見えるように調整したりできます。残すべきものは、必ずしも古いロゴの線一本一本ではありません。
02 / CHANGE
今の会社と合っていない部分は変える
次に見るのは、現在の理念や事業、これから目指す方向です。以前の会社を表すために作られた表現が、今の会社にも合っているとは限りません。
「古いから変える」と決めるのではなく、「今の会社を表しているか」を確かめます。色や文字、情報量を変える場合も、見た目の好みだけで進めないようにしています。
03 / RELATIONSHIP
デザイナーの考えを押しつけない
ロゴは、デザイナーが発表して終わるものではありません。クライアントが長く使っていくものです。だから、長年のロゴに込められた想いを、最初に聞いておきたいと思います。
プロとして改善案は出します。それでも、自分の好みを押し売りしない。相手が大切にしてきたものに寄り添いながら、一緒に選ぶことを意識しています。
04 / CONVERSATION
「今っぽい」「かっこいい」を、そのまま受け取らない
「もっと今っぽく」「もっとかっこよく」という相談はあります。でも、その言葉が指すものは人によって違います。シンプルな形を求めているのか、色を変えたいのか、競合と並んだときの見え方が気になるのか。まず基準を確認します。
参考にしているロゴやデザインを見せてもらい、どの部分を良いと感じたのか聞くと話しやすくなります。逆に、残したいところもその場で確認できます。提案前にこの認識をそろえるだけで、方向違いの案を減らせます。
今らしい表現を検討するなら、増えている造形と、その案件で採用できる条件を分けて確認します。
FRAMEWORK / ORIGINAL DIAGRAM
ロゴリニューアルで考える3つの視点
01
残す
認知されたモチーフ/企業らしさ/ブランドの記憶
02
見直す
造形/色/タイポグラフィ/情報量
03
合わせる
今の理念/現在の事業/これからの未来像
私は、残すもの、見直すもの、今の会社に合わせるものを分けて考えます。すべてを一度に新しくしようとすると、何を守るための変更なのか見えにくくなるからです。
05 / EXAMPLES
大手企業に見る「残すもの」と「変えるもの」
ここからは、各社が公表している事実と、私がロゴデザイナーとして読み取ったことを分けて見ます。各社の公式ページには実際のロゴも掲載されています。形の違いは出典リンクから確認できます。
COMPARISON / ORIGINAL DIAGRAM
3社のリニューアルを、同じ軸で比べる
01 / 1971 → 2011
STARBUCKS
- 残したもの
- サイレン
- 変えたもの
- 色・情報量・社名表示
中心モチーフを保ちながら段階的に整理
02 / 1959 → 2011
JAL
- 残したもの
- 鶴丸
- 変えたもの
- ブランド体系・現在の表現
過去の強い象徴を再び中心へ
03 / 2020
IDEMITSU
- 残したもの
- アポロ
- 変えたもの
- 造形・文字・統合後の見せ方
企業統合後の姿に合わせて更新
3社とも、覚えられてきた象徴を手放さず、今の会社に必要な情報へ整理しています。残すものが先に見えると、変えた部分の役割も分かりやすくなります。
STARBUCKS
Starbucks|サイレンを残し、見せ方を整理する
公式情報:公式ページに並ぶ4世代を見ると、サイレンは1971年から一貫して中央に残っています。1987年には緑を使った構成へ変わり、1992年には顔がより大きく扱われました。2011年では外周の「STARBUCKS COFFEE」という文字情報がなくなり、サイレンだけでブランドを示す形になっています。
私の見方:サイレンという覚えられたモチーフを残し、形と情報量を段階的に変えた例です。モチーフを守ることと、昔の構成をそのまま維持することは別だと分かります。
JAL
JAL|一度離れた鶴丸を、もう一度使う
公式情報:公式画像では、翼を広げた鶴が円形に収まり、中央の「JAL」と一体になっています。JALは鶴丸を1959年に採用したと説明しています。2002年には「太陽のアーク」を基調とするグループのデザインを発表し、その後、2011年4月1日に新しい鶴丸のロゴマークで正式に始動しました。鶴丸には、原点や初心に立ち返る想いが込められています。

私の見方:リニューアルは、常に新しいモチーフを作ることではありません。いったん離れた象徴を、今の会社の印として使い直す選択もあります。「新しい鶴丸」として導入された点にも注目しています。
IDEMITSU
出光興産|アポロを受け継ぎ、統合後の会社を表す
公式情報:公式画像では、横顔のアポロを表す赤いアイコンに、グレーの小文字「idemitsu」が組み合わされています。出光興産は2019年の経営統合を経て、2020年7月から企業ブランドを刷新すると発表しました。新しいアイコンは、従来のブランド資産を継承しながら「新しさ」や「洗練」などを加えて開発したものです。サービスステーションのブランドも「apollostation」に統一すると発表しました。

私の見方:残すものはアポロという象徴で、変えたのはその見せ方と、統合後の事業に合わせた使い方です。会社自体が変わるとき、以前からあるモチーフを新しい企業像につなげられる例だと思います。
06 / FUTURE
良いリニューアルは、会社のこれからにつながる
良いロゴリニューアルは、クライアントが納得できて、今の時代にも合い、その会社の発展に役立つものだと思います。見た目を新しくしただけで、その後の仕事で使いにくくては意味がありません。
提案時には、名刺やWebサイトだけでなく、採用資料や営業資料、店舗など、実際に使う場面も確かめます。今後も使い続けられるか。会社を伝える助けになるか。そこまで考えて形を選びたいです。
CONCLUSION
過去を受け継ぎながら、今の形にする
長く使われたロゴを変えるとき、過去を丸ごと捨てる必要はありません。認知されているモチーフやクライアントの想いを受け継ぎ、今の会社とこれからに合うように整える。そのために、何を残して何を変えるかを一つずつ見極めていきます。
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